大江健三郎『新しい人よ眼ざめよ』

読みながら思い出したのは、話題になったASKAのブログ。どちらも特定の人物への偏愛と、自分の罪の意識と、自己正当化と、未来への希望について語っている。ASKAのブログは、まるでブレイクの如く自作詞が挿入されている。これが結構いい詞なのだが。一応手記だろうが、話が進むにつれぶっ飛び感が増し、小説の様相を呈してくる。
大江のこの小説は、私小説を超え、手記といってもいい。小説のような手記と、手記のような小説。
これを書いたときの大江健三郎の年齢は、2016年現在の大江光の年齢に近いのではないだろうか。当時「新しい人」に該当した人びとは、現在、次の新しい人びとに伝えなければならないが、何を伝えるかは、バブル世代とか新人類などと呼ばれた私たち各自に委ねられている。