中森明夫『アナーキー・イン・ザ・JP』

青春漫画のような都合のいいストーリーだが、アナーキスト大杉栄とその周辺人物が現代に登場する展開が面白い。重きが置かれるのは大杉栄ではなく主人公の少年で、楽観的な欲望の肯定で一貫している。私たちはこの小説を読むとき、パンクロックを聞くときと同様、背後にあるセンチメンタリズムを感じなければ、ただのバカで終わる。そんな人は、時間が経てばつまらない大人になる。少なくとも私はそう思った。

この小説には、知識は半端なく盛り込まれている。しかし大事なのは、パンクを聞いた後、あるいはこの本を読んだ後、どんな行動をとるかだろう。行動に向かうエネルギーを喚起する力は十分にある小説だと思うが、世間では過少評価されていないだろうか。

ふと思ったが、漫画化されると大ヒットするんじゃないかな。