羽田圭介『隠し事』

最近よくテレビに出る人の小説。ページ数が少なそうなのを選んで読んでみた。
都会の狭いマンションで同棲している男女に「隠し事」はできるのか、という話。現代のプライバシーの場はケータイとかipodの中にしかない。そこで、人間の記憶力を鍛えて脳の中に究極のクラウド空間を造る、という発想が面白い。
先日私は東京に行って久々に電車に乗ったが、乗客はみんな当然スマートフォンをいじっている。意識的に覗き見していたわけではないが、見ているものは、私の住んでいる田舎の人々が見ているものとたぶんまったく変わりない。ケータイへの接し方が変わりないということだ。
だから、この小説で起きたことは日本中で起きているかもしれない。ただ人物描写が少ないので登場人物固有のイメージが持てず、小説に愛着は持てない。読み返すことはないだろう。