ど根性又吉

話題の『火花』、がんばってなんとか最後まで読んだ。ちゃんと身銭を切ってKindleで購入したので、感想を好きに言わせてもらう。
とにかく文章が読みにくい。作家によっては、あえて読みにくくすることで読者に注意を喚起するという手法もあるが、さすがにこの人にはそういった意図はないだろう。小説はすごく読む人らしいが、本田勝一の『日本語の作文技術』でも読んでみてはどうかと思ったくらいだ。また、説明が理屈っぽく、描写が薄い。ネット上の読後レビューでもよく指摘されているが、先輩漫才師の魅力が伝わらない。
救いは、会話の一部に含まれる、IPPONグランプリ的な笑える発想と言葉のセンスだ。
あの賞の、他の候補作を読んでないので比較はできない。ただ、昔阿部和重の『グランドフィナーレ』とかいう作品が同賞を獲ったので読んでみたとき以上の、悪い意味での衝撃を受けた。ちなみに阿部和重は好きな作家で、『ニッポニアニッポン』で同賞を獲っていれば私は納得できた。
忙しい芸人活動の合間にこれだけの量を書くのは並大抵ではないと思う。しかし彼は、IPPONグランプリ的な、サッカーでいうとゴール前のフリーキック的な、一瞬のひらめきに才覚を発揮する人ではなかろうか。そういえば、彼は俳句(文学のフリーキック版?)もやってるんじゃなかったか。