映画『台風クラブ』

カープが優勝した年に公開された映画、という、わかるようなわからないような企画で放送されたもの、録画をやっと見た。

公開当時、僕らは主人公たちとほぼ同世代だったが、観た人はみんな、よくわからん映画、と言っていた。だから、当時の多くの中学生の気分を代表する映画ではないが、気分を先鋭化して、その先を行っていたのかもしれない。ただ当時は明るく能天気な時代であり、そう思ってても言えない空気があった。

見返して話の細部はほとんど忘れていることに気づいた。当然だろう、主人公たちは現在、中年期も終えようとしている世代だ。それくらいの年月が経っている。

子供と大人の対立、という図式だけではすっきり理解できない映画だが、数学教師の義父?が入墨を見せるシーンは、どきりとさせられる。テレビドラマなら、最高視聴率の瞬間か。

いやそれなら、雨の中中学生たちが『もしも明日が』で踊るシーンのほうが、数字が取れる。

こんな「不謹慎」な映画を地上波で放送したRCCがMVPだ。ほとんどカープ関係ないし。

窪美澄『ふがいない僕は空を見た』

連作長編のなかでも、『セイタカアワダチソウの空』が秀逸。池澤夏樹のような醒めつつ優しい小説世界に引き込まれた。

心もとない登場人物たちばかりだが希望を感じさせる、奇蹟的な作品だ。

東京は夜の7時

パラリンピック閉会式で流されたピチカートファイブもいいが、矢野顕子のほうもいい。リオデジャネイロは朝の7時。

アナウンサーも言っていたが、東京の夜7時は、なぜだかわからないが、特別にいい。

私が今住んでいる町は、何時がいいだろうか。

しばし考えたが、日曜日、JAの朝市に行く時間が最高です。

田山花袋『少女病』

リオ五輪からカープ優勝までの熱狂で、すっかり読書時間を奪われてしまっていた折、とんでもない怪作を読んでしまった。

会社の行き帰りの電車での美少女探しと、少女万歳の詩を作ることが快楽の、気持ち悪い中年男が主人公。こんな話を文学として成立させた当時のインパクトは、計り知れないものだったろう。

彼がいまこの時代に生きていれば、バッドエンドにはならなかったかもしれない。アイドルブームとメディアの発達で、楽しみはいくらでもあるし、追っかけている中年男も世に大勢いる。

で、言いたいのは「田山花袋は私だ」ということ。オリンピックの卓球女子団体に涙し、バトミントン美女に心奪われていた私は、主人公よりも一回り年上であり、彼にも増して気持ち悪いではないか。今年はチケット入手が難しかったため、カープ女子見たさにマツダスタジアムに行くことはなかったが。仕方ない、欅坂46の動画でも見るか。

大丈夫、現代は美少女崇拝が市民権を得ているから、気持ち悪くとも私は死なない。